篆書体（てんしょたい）による刻印「篆刻」の底款がある中国宜興紫砂壺（ぎこうしさこ）、宝瓶や急須とも呼ばれる茶壺です。 底款から、女性の陶芸家「馮勤芳（フォン・チンファン）」であることが。蓋の裏にも「馮」と「勤芳」の蓋款が見られます（写真６）。 １９６８年生まれの「馮勤芳」氏は、１９８０年代に宜興紫砂工藝工場に入社、入社後は中国美術工藝の著名な「徐漢棠（シュ・ハンタン）」ら先達の指導の下で、「馮勤芳」氏の高い理解力と勤勉な手腕も相まって早くから頭角を現す。現在、国の美術工藝師の肩書を持つ人気作家の一人のようです。 茶壺の形状は、蓋のツマミと（胴も含め？）注ぎ口は瓢箪を、持ち手はそのツル？と想像しますが、ユニークで、紫砂壺ではあまり見かけない形状です。「馮勤芳」氏の作品にも、見た限りでは、類似のものはありませんでした。 胴表面に彫られた漢字の読みが不明な点はご了承下さい。なお、漢字や絵図は、別の彫刻（陶刻）家に依頼されたものかも分かりません。 製作時期は不明ですが、汚れや色むら、キズなどは否めません。蓋に一ヶ所小さな欠け（写真６）が、持ち手両側の付け根に生じた損傷の補修跡が見られます（写真１０～１２）。持ち手の付け根周辺にヒビなどの傷は見られないことから、製作段階で持ち手が外れ補修されたものかも分かりません。なお、水漏れのないことは確認済です。 大きさは約、高さ１１㌢、口径４㌢、胴径８㌢、横幅９．８㌢、底径４．５㌢、重さは約１５５㌘、容量は約１５０㏄です。 宜興紫砂壺の女性陶芸家「馮勤芳」の作品です。同氏は活躍中の人気作家のようです。あまり見かけない形状の茶壷です。コレクションに加えていただくだけでなく、傷は使用に支障はないと思いますので、洗浄の上、煎茶などを味わっていただければ幸です。